がん免疫治療と免疫細胞治療がん免疫治療と免疫細胞治療

4.免疫細胞治療を有効にするために~複合的ながん免疫治療~

がん免疫治療の問題点とその対策

これら6つの問題点に対して、どのような対策をたてれば治療が有効になるか一つ一つ考えていきます。

1)がん抗原の消失あるいは発現低下

対策
抑制されていたがん抗原を発現させる
ヒストン脱アセチル化阻害剤、DNAメチル化阻害剤
内在性がん抗原の放出
がん細胞を破壊しがん抗原を放出させることで、樹状細胞が抗原を取り込み、キラーT細胞を刺激する目印をつくることができるようになります。
・物理的破壊
– 放射線照射
– ラジオ波照射
– 光線力学的療法
・化学療法
– アントラサイクリン、オキサリプラチン
(免疫誘導性のがん細胞死を起こす)
MHCクラスI分子とがん抗原の複合体を増やしてキラーT細胞が、がん細胞を認識しやすくする
・放射線
・サイトカイン(IFN-γ、IFN-α/β)

2)樹状細胞の抗原取り込み、プロセッシング、成熟の低下

対策
樹状細胞の活性化
樹状細胞を活性化させてリンパ節でキラーT細胞を効率よく刺激できるようにします。免疫刺激物質として、以下のような物質が使用されます。
・Toll like receptor (TLR) 刺激剤
CpG、Poly I:Cなど
・サイトカイン
GM-CSF、IFN-α/βなど
・熱ショック蛋白
HSP70など

3)リンパ節におけるCTL活性化の低下

対策
ヘルパーT細胞の増殖・活性化
リンパ節で、樹状細胞と連携してキラーT細胞を活性化するヘルパーT細胞を増やしたり、活性化させます。
・サイトカイン(IL-2, IL-7, IL-15など)
・正の共刺激分子アゴニスト抗体
抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、抗CD40抗体など
・負の共刺激分子の阻害
抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体

4)CTLの数が少ない

対策

T細胞受容体遺伝子導入

キラーT細胞が増殖できる環境を整える
免疫抑制剤や全身性放射線照射などによる前処置によって、細胞移入されたキラーT細胞が体の中で増殖できるようにする。
T細胞受容体遺伝子治療
遺伝子工学の技術を使ってがん抗原を認識するT細胞受容体遺伝子(TCR)をT細胞に導入し、がん特異的TCRを発現するキラーT細胞を人工的に作製します。そしてキラーT細胞の数を増やし、がん患者さんの体に大量に移入します。
T細胞受容体遺伝子導入
がん抗原特異的TCR遺伝子をベクターと呼ばれる運び屋を用いて、T細胞に導入します。
 

5)CTLのがん組織へのホーミングがうまくいかない

対策
ケモカイン、接着因子を増強する
サイトカイン、遺伝子治療

6)免疫抑制環境の構築

対策
腫瘍内の免疫抑制因子の除去
・手術でがんを取り除く
・シグナル伝達異常の制御(MAPK阻害剤、β-catenin阻害剤、STAT3阻害剤、NF-kB阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤など)
・がん細胞が産生する抑制因子の阻害剤 (IDO阻害剤、COX2阻害剤、アルギナーゼ阻害剤、抗PD-L1抗体など)
・抗癌剤(シクロホスファミド、ゲムシタビンなど)や抗体を使って、制御性T細胞、骨髄由来抑制細胞を取り除く
・キラーT細胞の反応を抑制する負の共刺激分子のシグナルからキラーT細胞を保護する(抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体など)
正、負の共刺激分子