がん免疫治療と免疫細胞治療がん免疫治療と免疫細胞治療

3.がん免疫治療の課題

がん免疫治療にはまだまだ問題点が山積みで、新しい腫瘍免疫学の知見に基づいて改良していく必要があります。

免疫があるのになぜ「がん」になるのか?

がんに対する免疫監視機構が存在するにも関わらずがんが増殖してしまうという矛盾を説明する仮説が「がん免疫エディティング」です。免疫の働きは、がん細胞を排除するだけではなく、同時に、免疫原性の低いがん細胞を増殖させてしまうという両面性をもっていることが示されました。

Cancer Immunoediting
ワシントン大学Schreiber博士提供

がん免疫エディティングは三つの相(排除相、平衡相、逃避相)からなります。
排除相は従来のがんの免疫監視機構であり、自然免疫系と獲得免疫系の両方の免疫細胞が関与してがん細胞を排除します。ところが、免疫系の働きによっても完全に排除されず生き残ったがん細胞が存在すると、それらの細胞は平衡相に入ります。
ここでは免疫細胞とがん細胞との相互作用により、消えもしない、大きくもならないといった状態が続きます。
次に、平衡状態が何らかの理由で破綻すると、より生存に有利な免疫原性の低いがん細胞が選ばれて増殖します。これが逃避相です。平衡相の終わりから逃避相にかけての短い時間に、がんの免疫原性が低下すると考えられています。がん細胞を殺すはずのT細胞が逆説的にこの役割を果たしていることもわかりました。
このように、免疫系はがん細胞を排除すると同時に、次第に免疫原性の低いがん細胞を選別して増殖させてしまうのです。

エスケープ現象:免疫からの逃避のメカニズム

がんが免疫監視の目から逃れる現象は、エスケープ現象、あるいは免疫逃避とも呼ばれています。主なメカニズムとして、がん抗原やMHCクラスIなどの抗原提示に係わる分子の発現低下によるがんの免疫原性の低下や、がん細胞が産生/誘導する多様な免疫抑制分子や免疫抑制性の細胞が誘導されることによるがんの免疫抑制性環境の構築などが挙げられます。

エスケープ現象